平成21年1月7日(水)


今回の病気自体はどんどん良くなっている。
しかし昨日のSの無反応が気になり、何か参考になる情報はないかとネットで検索。
術後、鎮静剤投与後、入院直後、一過性、記憶の混乱・・・。
思いつく限り次々とキーワードを入れて検索したが、何も出てこない。

情報が無いからといって、その現象が無いことの証明にはならない。
問題として取り上げられてなかったり、
論文だって、当たり前すぎると逆に書かれないこともある。

「有ること」の証明は簡単だが、「無いこと」の証明は非常に難しい。
とにかく、手がかりは得られなかった。

さて・・・。

早めに仕事を上がり面会に行く。
変化の期待を込めて、病室に入る。

が、見事に裏切られる。


呼んでも振り向くことすらしない。

おママには「問題ないよ」と言ったモノの、こりゃあ・・・。
ベッド脇に車椅子が置いてある。
何だよ、歩けもしないのか?

しばらくしてやっとこっちを向いたところで「抱っこするか?」と聞いたら、少しだけ頷く。
おお、初めて反応した。

しかしその体に力はなく、相変わらず四肢はダラリとし、無表情。
首も斜めに項垂れている。
どうしちまったんだ、おい・・・。




日勤担当のAOさんが、

「朝(ウルトラマンの)本を見て『コレナニ?』って聞いてくれたんですが、それっきり・・・」

う〜ん。
その後は私の言葉に一切反応せず。

お互い無言のまま、時間だけが過ぎる。
暇だな。
帰っちまうぞ、もう・・・。

気が付くと、ベッドに地図ができている。
あちゃ〜・・・。

オムツの残りが少ない。
一度買い物に出ることにした。

外の冷たい空気を吸い、冷静になったところでふと気が付いた。

「そういえば、昔もこんな事あったよな・・・。」

入院中に大病した後、回復しているにも関わらず、グテッとなってしまったことが。

ちやほや面倒を見てくれるので、甘えて起きようともしなかった

オマエが熱もないのに、ずっと横になっていられるハズがない。
至れり尽くせり看護してもらえるもんだから、
精神的に「ボクは重病なんだ」と思い込んでいるに違いない。
知能が発達した分、またリアルに病人になってしまっているのだろう。

弱い、弱いぞ、弱すぎる。


Sの元に戻り、買ってきたオムツをベッドに掛けるやいなや、

「そもそもオマエ、何でオムツでしてんだよ。」
「ちゃんとトイレに行くんだろ!」
「それ以前に返事すらしないとは何事だ!!」

ベッドに座って話を聞きなさいと言っても、相変わらず返事すらなし。

デコピンで喝!!

Sが、ムスッとした表情になった。
廃人からの帰還である。

Sをベッドに正座させる。

いくら喉が痛くて喋れなくっても、
首を縦に振ったり横に振ったりして返事できるだろう?
みんなSの事心配して面倒をみてくれているのに、
無視するなんて失礼だろうが!

返事だけはするんだぞ!

S「・・・。」


返事!


S「・・・。」


返事!!


S「
ふぁ〜い・・・


蚊の鳴くような声だが、初めて声で返事をした。

食事が運ばれてくる。
再びそっぽを向いて寝ているS。

食事が出るって事は、もう食べていいって事なんだよ。
オマエのこの管理が必要な食事を作るのは大変なんだよ。
食べられなくても香りくらい嗅ぎなさい!!

仕方なく、ムックと起きあがって臭いを嗅ぐS。

食べなくても、
嗅覚から脳に刺激を与えるのも狙いの一つ。




夜勤担当のSRTさんに、歩いてトイレに行って良いか確認。
マスクをすればOKとの事。
ほら、もう歩いていいんだぞ。

末梢の点滴台をゴロゴロ引いて、歩いてトイレに。
リハビリだ。

生意気にもフラフラしているので、座らせてさせた。
既にオムツに出していたので、チョロとも出なかったがそれでもよし。

すぐに病室に戻るも、Sは部屋に入ろうとせず。
歩きたいのか?と聞くと、首を縦に振る。

ホレ見ろ。
動きたいんじゃないか。

とはいえ感染症持ちなので、遠慮がちに出入り口周辺をウロウロ歩かせる。





その後も帰り際に再度トイレに歩かせた。
今度はちゃんと立ってした。

しかし、観察室に戻ったらマスクは外していいのに、
ベッドでも自らマスクをかけてしまった。
弱すぎる・・・。


夜勤担当のSRTさんに、
明日もできるだけ自力でトイレに行かせるようお願いした。

帰り際、内科勤務になったST(Y)さんに会う。
Sの変わり様に驚いていた。

いえいえ、これは仮の姿です。
すぐにうるさいくらいに元気になりますから。


帰宅途中の寒空の中。
思えば「口から食べる」って、凄く大切なこと。

人間、口から食べて初めて身体機能が回るのだ。
臭い、味を感じ、咀嚼している間に非常に多くの情報が脳に伝わる。
脳は全身に「食べている」という信号を出し、
各臓器がそれに応じてそれぞれの仕事にとりかかるのだ。
絶食後のSの変化は、痛いほど経験してきたはずだった。

どうせ喉が凄く痛かったので、ビビって食べられないんだろ。
自主絶食なんて、もはや無駄以外なにものでもない。
食べなきゃ点滴は外れないし、元気も出ない。
明日は一口でもいいから無理にでも食わせよう。

そして明日も性根を叩き直してやる。
早く笑顔が出るようにな。


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