平成23年8月26日(金)
おママから連絡。
今日から小児内科病棟に移される、との事。
どうやらNICUに新しい子が入るので、玉突き出所となったらしい。
でもNICUを出たって事は、点滴が外れたってコトかな?
ならば、呼吸も安定していれば退院は近いはず。
よーし、よしよし。
染色体異常の疑いッたって、この呼吸低下さえなければ指摘されなかったもの。
何より元気なんだし、よくミルクも飲む。
手足も力強い。
だから大丈夫、なんともないんだってばっ!
不安を打ち消す要素が、自分の中でかなりレベルアップ。
足取り軽く、まずはおママの病室へ向かう。
おママはやはりおケツの悩みが厳しいらしく、グッタリしている。
ふとサイドテーブルを見ると、お願いしてあった養育医療の意見書があった。
なんだ、もうできたの、はえージャン。
源泉徴収票も今日できあがったし、これで申請することができる。
どれどれ・・・。
と何気なく書類を広げると・・・しかしそこには我が目を疑う単語が。
その他所見(合併症の有無等):顔貌異常(耳介低位、眼裂斜上、鞍鼻)、翼状頚 |
ガラガラと、天井が崩れ落ちてくる音が聞こえた。
ああ・・・7年前(約8年前)と同じ感触。
いや、もしかして・・・。
これ、どうなの・・・。
治療でどうなるものではないかもしれない。
フワッと、血圧が一気に下がったのがわかった。
おママはババ様が昼に面会に来た際、
この書類を手にしたので奪い返したそうだ。
そんなことはない、いやそれだけは。
早くHを見たい。
意見書の記載に対し、
「そんなー!大げさな〜!!」
と、早く自分を安心させたい。
おケツ痛々症候群で腰の重いおママを促し、小児内科病棟に向かう。
小児外科の前で、今日もまた嬉しい再会が。
そして、内科に異動された方も多い。
心強い。
しかし「NICUと小児内科で、小児病棟、全部制覇しちゃいました〜!」
との冗談ぶるのが精一杯だった。
ホント久しぶりなのに、ヨソヨソしくて、皆さんスミマセンでした!!
小児内科病棟は、病室の前を通ったことはあるが、中に入るのは始めて。
おママも、Hが移動したと聞いてから、同じく初めてHを見る。
Hはどこだ・・・?
あ゛・・・保育器?!
状態が悪いのかと、心配になる。
外れていると思っていた、点滴もそのままである。
聞けば、周りから感染をもらうのを防ぐ目的だという。
そして手袋に、ビニールエプロン着用の指示。
とにかくHを触る。
ん・・・足が冷たい。
こんなんでいいのだろうか。
心拍数も上昇と下降を繰り返し、その度にアラームが鳴る。
もう、止めた側からなり出す始末。
「センサーが・・・。」
「バッテリーが・・・。」
と看護師さんは仰るが、とにかく着ぐるみだけは早く着せてもらった。
この一連の様子から、おママは不安は一気に頂点に。
ここで、本当にいいのだろうか。
早く退院した方が、家で集中して看た方がいいのではないかと・・・。
とにかくHをダッコする。
するとHが目を開けた。
えっ?!
ふっ、二重?!
私とおママは共に一重。
子が二重になる確率はかなり少ない。
これって、ある種の染色体異常の顔貌なのではないだろうか。
必死に打ち消す材料を探していた私にとって、とても強烈な一撃であった。
何か、病室の私達のこのエリアだけ、ここにあって、ここにない感じ。
目の前に居るのに、手が届かないかのような、違和感。
孤独・・・。
ちょうどそこへ、HO先生が。
いや〜・・・今日は酷いな・・・みんなまだお昼ご飯も食べてないんだよ・・・。
急に(患者さんが)増えちゃって・・・。
先生、もう既に夜ですが。
なのに、私達に捕まって、スミマセン。
でも先生、Hの手足が冷たく、アラームが鳴り続けているのですが・・・。
とにかく、(胸の)音を聞かせてね。
と、聴診器を当てる。
う〜ん・・・。
確かに心拍数が安定していないかもしれない。
しかしこの程度で、今すぐ命がどうのってレベルではない。
今後も注意深く観察していく。
やはり、出生時にダメージがあったのかもしれないな。
先生、おママが明日退院なのですが・・・。
血液検査の結果から、今は血液が濃い状態である。
血液が濃いと、それだけで心臓に負担がかかる。
なので、まだ点滴が必要である。
しかし新生児ではよくあることだよ。
血液検査は毎日行って頂いているのでしょうか?
いや、そうそうすぐに変わるものではないので、
2〜3日に1回くらいだ。
では、やはりすぐに退院、というわけにはいかないと・・・。
1週間、2週間、3週間・・・位でしょうか?
いや、状況が把握できて、方針が決まれば、
退院は早くできるかもしれない。
心拍が不安定な状態で、更に心臓に負担がかかると言われると、もうどうしようもない。
お願いします、としか言えなかった。
そして・・・やはり聞いてしまった。
「コイツ、二重なんですか?」
先生に何度聞いても、どのように質問しても、肯定も否定もしないことはわかっている。
でも、聞かずにはいられなかった、顔貌異常のこと。
そこは、私が書いたんじゃないんだが・・・。
と、意見書を確認。
先生は一読され、
・・・これは失礼だ!
私ならこんなふうには書かないよ!!
と、憤慨される。
いえいえ、医学用語、ですから。
(正直にそう思われたのでしょう)
実際、どこがどうなっているって意味なのでしょうか?
本当は遺伝の先生から説明してもらうべきところなのだが・・・。
と仰りながら、実際Hを見て説明して頂く。
耳介低位というのは、目尻より耳が下にあるということ。
Hの場合微妙だが・・・耳が上のように(正常であるように)も見える。
眼裂斜上は、目がつり上がっている様子。
鞍鼻は鼻が低い様子。
翼状頚は、首の後ろがだぶついているってこと。
確かに、首の後ろはぶっくりしているように見える。
複数の先生が同じ意見なのだろうか。
産科の先生から指摘があった。
我々(小児内科)が見ても、傾向はあると考えた。
やはり、何らか染色体異常の兆候なのでしょうか・・・?
もちろん、このような外見上の特徴があっても、正常なヒトは沢山いる。
そもそも染色体異常って、意外に多いんだよ。
一口に染色体異常といっても、何千種類もある。
普通に生活していても、染色体に異常があることもある。
大抵、普通に生活できている。
そう、その普通の程度が、立場(先生・患者)によって閾値が異なるんだよなぁ・・・。
だから、不安になる。
その不安が拭えない。
先生、ダウン症の可能性も?
・・・否定はできない。
先生、検査結果が全てで、それが出ないウチは何とも言えないことはわかってるんです。
でも、怖くて怖くて・・・。
よくわかります。
私達も分かることは説明するし、できることはやる。
何でも、気になることは何でも言って下さい。
先生、宜しくお願いします・・・。
小児内科は初めてで、右も左もわからない。
面会時間が何時からで、お乳はどのように与えるのか。
退院後、絞った乳はどうやってHに与えるのか。
そもそも明日のおママの退院の手順もわからない。
よくわからないうちに、気が付けば面会時間を大きくオーバー。
とにかく慌てて帰途に着いた。
病院を出ると、雷を伴った激しい雨は、小降りになってなお降り続けていた。
どうして、何で、ストレートな喜びを与えられないのか。
厳しすぎる。
ごめんなS、お前ほどHの誕生を心底から一緒に喜べなくて。
ごめんなH、僅かな面会も暗い顔になってしまって。
おママは、前向きに早期退院を望んでいる。
一方おパパは写真を撮る気にさえなれなかった。
そんな自分が一番恨めしい。