平成23年8月23日(火)


朝、枕元の携帯が鳴る。
ああ、やっぱり始まったかと思いつつ、
寝ぼけてスマホートフォンの操作を誤り、
なかなか電話に出ることができない。


電話はやはりおママから、始まったので来て欲しいとのことだった。

時計を見ると朝の4時半。
急いで着替え、車を飛ばして電話から40分弱で到着。
産科の看護師さんから早いですねと驚かれる。

始まったら早く生まれるだろうとのおママの予想もあり、
スタンバってたからね。



私が到着すると、おママは陣痛室に入っていた。




助産師さんに状態を伺うと、


そんなに時間はかからないかもしれません。


それって、どれくらい時間ですか?


早ければ1時間半か、2時間位だと思います。


との事。
この時点でジジババ様に電話を入れる。


助産師さんが数回チェックしだろうか、


分娩室に行きましょうか。


ええっ?もうですか?


あと1時間くらいかと・・・


更に早まってるじゃないですか・・・。




Sの時は個人の産院であり、設備は豪華で分娩室も広く立派だった。
ここは大学病院、先の陣痛室もここの分娩室も、
外来の診察室のより「単にちょっと広いそれ」って感じ。

出産は病気ではないし、そもそも昔は家でやってたんだろうから、
こんなもんでいいんだろうな、なんて余計な事を思いつつ・・・。

おママの陣痛は激しく、助産師さんの確認もままならない。
Sの時はこんなに辛そうだったっけ?


ついついSの時と比べてしまうが、あの時は出産が重なり、間際まで誰も来てくれなかった。
苦しむおママの腰を、汗ダクのになりながらさすり、おケツを押さえ・・・。

もう待ちきれず、
俺が受け止めてやる!と覚悟した程。


今日は他に出産がないこともあってか、
おママ一人だに助産師さんと看護師さんのフルメンバー。
これが本来の形だよなと思いつつ・・・。



俺、何もやることがない。



節電で気温が高く、とりあえず団扇でおママを扇ぐ。



しかしおママの陣痛は台に足を乗せるのも、ままならないほど。
何とかセット完了したところで、先生も到着。

そろそろビデオとカメラのテストをするかと構えたところで、


マ「ふんぬ゛ぅ〜あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」


と本キバリ。


よ〜し!





って先生、
それ、子供じゃないですかぁ〜!?




午前6時48分、H(♂)誕生。

おママ自身も驚くスムース出産だった。

ビデオの録画ボタンを押していたオレ。
ファインプレーだ。




Hは後処置のため、そのまま裏手に直行。
おママのそれも、同時に並行。

なかなかHを見られないなと思いつつ、
しばくしてやっと呼ばれた。





体重3、236g、身長●●cm。
結構毛深いが「こんなもんです」と看護師さん。


ただ、側でサチュレーションのアラームが鳴っている。
何度もセンサーを貼り直し、場所を変えても今一つ。


新生児は手足の皮膚が厚いので、取れないことはよくあることです。
ちょっと早く生まれすぎて、体の順応が間に合っていないのかも。
でも、生まれた直後はよく泣いていたし、大丈夫です・・・。



とのこと。
ふ〜ん、そんなもんかと思いつつ、おママの仕上がりを待つ。


そして、やっと対面。




Hをよく見るために、アタマをもたげるおママ。
よく力がでるなぁ。



先生のOKを頂き、ジジババ様を分娩室へ。

病院の規則で、子供(兄弟)は分娩室に入れない。
でも、そうなるとMRSAのせいで、
SはHが退院するまで会うことができなくなってしまうかもしれない。

確かにそれは、ということで、別途ご配慮頂いた。

Sが写って居ないのが残念。



そして私とSだけ外で待機した。



しばらくしてジジババ様の姿が見えた。
面会を終え、出てきたのだ。

ところがどうも浮かぬ顔。
聞けばHが保育器に入れられ、連れて行かれたという。


バトンタッチでSを託し、分娩室へ。

胸に雑音があり、念のため小児内科に回されたと、おママ。

アララ・・・。


これが個人の産院だったら、また救急車で搬送されていたのだろうか。
それは御免なので大学病院にしたのは大正解っちゃ正解だが、
それもどうよ・・・。


おママが病室に戻る。

「また連れて行かれた・・・」と落ち込んでいる。

なんの、まだ何があるって訳じゃない。
元々新生児室だって隔離じゃねえか。





しばらくして先生が説明に来て下さった。


若干、呼吸が弱くなる時がある。
胸の雑音に関係があるのかもしれないし、
出生時のストレスで生じることもある。

まあ現在の状態からこのままでも問題はないように思うが、少し様子を見たい。
このまま産科で診るかNICUで診るか、検討する。

どちらで診るにせよ、小児内科、NICUの医師が当たるので、
(科の違いによる)心配はない。

方針が決まり次第、連絡する。




様子見、ということで、待つしかない。
大丈夫、これまでの診察で問題が見つかっていないじゃないか。


おママは3時間毎にトイレに行くように指示された。
早速初回に立ち上がるが、とても痛たがり辛そうである。

お腹はゴロゴロと大きく鳴る。
劇的変化が続いているのだろう。




おママが空腹感を訴え、おにぎりとパンを買いに出る。
まだ10時頃。
昨晩も病院食では足りなくて「ヒタヒタ状態」であったそう。
もちろん、朝食も食べていない。

ちょっと買い出しにというところで、先生方が説明に。


状態は落ち着いているが、やはり時々呼吸が少なくなる一瞬がある。
検討した結果、やはりNICUで診ることが望ましいと考えたが、良いか。



もちろん、です・・・。
つくづく新生児室に縁がない・・・。


エコーで心臓の管が閉じていないことがわかりました。
これは出生後間もなく自然に閉じる心臓の血管で・・・。



PDAですか?


そう、それである。


なら、自然に閉じそうですね、少し安心する。


問題ないことを確認するため、NICUにて検査を継続して行う。
大きな疾患が隠れている可能性もあり、それを一つ一つ潰してゆく。
そして、今後の方針を検討する。



なるほど、よろしくお願いします。


NICUに入る手続きを行うように。


わかりました。
面会時間外だから、私はそろそろ帰るように言われていましたが、居ります。


ところで先生方、方針を検討するって、オペになる可能性もあるんですか?


いやいや、それはないよ、確認のための検査だよ。


と笑われてしまった。

”オペの方針を検討するということか”との質問と誤解されてしまったようだ。




買い出しに戻ってきたところで、昔お世話になったスタッフ、看護師さんと次々出会う。
皆Sの様子を聞き喜び、Hの誕生を知って驚く。

そら、今日の今日だもんで。

でも万全元気ですと言えず、ちょっと顔が曇る私を不思議に思ったことだろう。
歯切れ悪くて申し訳がない。


そういえば、産後いつから食べていいとか言われていなかった。
迷っているうちに看護師さんが来たり、バタバタしていて、結局お昼ご飯になってしまった。


昼食を食べしばらくすると、NICUで説明がある、とのこと。
おママは無理せず車椅子。

NICUは小児外科と小児内科の間にある。
そう、小児外科とはSが2年お世話になった小児外科。
ナースステーションを通過する際、TB先生と目が合った。

すみません、また後でご挨拶に伺います!


NICUで、


まだ私が担当になったわけじゃないですが・・・。


とHO先生。
現在までの説明を伺う。


呼吸も落ち着いてきている。
このまま経過を観察する。


まず・・・我々は出生後1分と5分の状態を観察し、評価している。
Hの場合、10点満点中、7点だった。

7点とは・・・医学上・・・「新生児仮死」となる。
仮死と言っても・・・



先生、大丈夫ですよ。
時として、医学用語は一般人の常識と合わない事はよく知っています。


このような場合、裏に大きな病気が隠れている可能性も考えられる。
それを否定するため、検査をしてゆく。

これまでに、エコーでは本来出生後間もなく閉じなくてはならない心臓の血管が、
少し太くて閉じていないことが確認できた。

肺のX線像では、特に問題は見られなかった。

血液検査では、まず白血球が高かった。
新生児にしてはかなり高いが、これは直接的に関係はないと考えている。

あとはCKとLDHがかなり高い。
何れも細胞が壊れると出てくる。

やはり、出生児に何らかストレスがかかったのだろう。
このストレスによるものである可能性も考えられる。
そうであれば、時間と共に落ち着いてくるだろう。



先生、CKとLDHは筋肉以外の細胞が壊れても出るのでしょうか?


両方とも筋肉に多く存在しているが、それ以外の細胞にもある。
しかし状況から心配はないだろう。

今回も検査したからわかったまでで、
何も症状がなければ知らずに終わったかもしれない。

その他、血糖値も電解質も異常は見られなかった。



あと異常低値もあるようですが?


正常値は成人用のものである。
新生児でこれくらいは問題はない。



そうですか、わかりました。

ということで、Hと対面。

寝ていた。
鼻・・・兄弟でマーゲンチューブにならなくとも・・・。




あと、ミルクを上手く飲めるかどうか。
ミルクを飲んで呼吸が安定しているかを確認する。



そうですか、わかりました。

で、先生。
あと何を検査するのですか?


それはまたあちらで・・・


ということで、再びデスクに戻った。


机の向こうに先生、こちらに私達。
お誕生日席には記録の看護師さん。


驚かないで聞いて欲しいのですが、
念のため染色体の検査をしようと考えています。



・・・染色体・・・ですか。


容姿で、ちょっと気になるところもあります。
これもはっきりすれば、原因を一つ否定することができます。

もちろん、個性かもしれませんし、
まあ、今の状態からして、問題はないと思いますが・・・。

検査をしないという選択肢もあります。
ご両親が検査を望まないのであれば、行いません。




まあ・・・異常があれば、何れそこにブチ当たるワケで・・・。
知らずにモンモンと過ごすより、検査を望みます。

とは言ったモノの・・・。

「染色体」「気になる」

と言われて、ドキッ!っとビビらないわけはない。

先生が「問題はないだろう」と仰るのは呼吸についてであって、
染色体異常の有無の事ではないからである。


実際に、(容姿の)どこが気になる所でしょう?


目と鼻と手・・・あ、いや。


先生、猿線は私もですし、耳はSもくしゃくしゃでした。


そうですね、個性かもしれません。


否定してほしい。
いや少しでも可能性が低いという見解が欲しい。
質問を変更してみる。


そんなに染色体異常に特徴的な容姿なんでしょうか?


染色体異常といっても、様々ある。
全ての染色体異常が外見でわかるわけではない。



そっちですか。
見事にかわされてしまった。


外見は個性か染色体異常か。
先生だって検査しなくてはわからない。
安易なことは言えないってことも理解している。

理解はしているが・・・。
う〜む・・・。


ちょっと、不完全燃焼で、おママの部屋に戻る。

「染色体異常」

頭から離れない。


その後NICU入院手続き等を行った。




夜、再びHに会いに行く。
今度はおママと一緒だ。

HO先生がエコー中とういうことで、終わるまでしばし待つ。


エコーとは・・・?
心臓だろうか。

「どうぞ」

と呼ばれて、先生とHの元に。


オシッコが出ていないので、膀胱を見ていた。
しっかり尿は溜まっていた。
これなら何れ出てくるだろう。



そうですか、わかりました。
ありがとうございます。

呼吸はどうでしょうか?


ずっと側について観察していたわけではないが、
落ち着いてきている印象を受ける。


15時のミルクはちゃんと飲めた。
そして呼吸への影響は見られなかった。



そうですか、安心です。


Hを目の前にしたところで、
先生、実際どこが気になるんでしょう?
どうしても頭から離れないところを再度伺ってみる。


目ですかね。
目の・・・。



と言いかけて、


僕の説明が悪くて、不安にさせてしまったようで、申し訳ありません。


しまった、しつこすぎたか。
優しく怒られてしまった。


望まないなら、検査を行う必要はありませんよ。


いいえ、そういうわけでは・・・。

と、再び上手に逸らされてしまった。
これ以上は聞けないな。




ちょっと遅れて、18時のミルク。

おママが試みるが、車いすではてが届かない。

私が保育器の裏から・・・ってどうやるの?

Sの時は生まれてしばらく絶食だったから、
まして首が据わりもしないウチのミルクなんて、やったことがない。

看護師さん教えてもらうが、上手くいかず。
私は支えているだけの係となった。




ゲップ出し。
これも初めての経験。
座らせて、H・・・首が折れてるぞ・・・。

片手で頬杖のように顔を上げておいて、背中をトントンと。

H「ゲファ!」

と豪快な一発。

何もかもが、初めてで新鮮。


「もしかして、S君の・・・?」

そうです。

聞けば看護師さん、KJKJさんでした。

NICU勤務ながら、Sをかわいがって下さっていた。
私達は名前だけSから聞いていた。
お会いできるとは。


残念ながらお世話になった小児外科病棟の顔ぶれは、
だいぶ変わってしまっていた。


Sがいた頃新人〜2年目だった看護師さんは、
今ではとりまとめ・指示を出す立場になっている。

それは素直に嬉しい。


そういえば今回初めてお世話になる先生方、
自分と同じくらいか、もしかして若いかもしれない・・・。
そんな年齢になってきたのだな。

今日は院内を歩いているうちに、異動された看護師さんの何人かにお会いできた。
皆さん、Sの成長に驚いていた。

重ねて、嬉しい。


今日は長い長い1日だった。
両手放しでは喜べないのが残念であるし、また申し訳ない。


おママの退院は土曜日予定とのこと。
金曜だと思ってた。



染色体の件は、検査結果がでるまでわからない。
正常の可能性もあるし、そもそも「念のため」との話しだった。
余計な心配はさせまいと、
ジジババ様にはまだ言わないでおこうと話し合った。

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